ELECOM VM800L ホワイトをレビューしていきます。ELECOM VM800Lは世界で初めてUWB (Ultra-Wideband)通信に対応したゲーミングマウスです。UWBと特徴的なハーフエルゴ形状を併せ持つ移植ともいえるマウスを徹底レビューしていきます。
レビュー用サンプル提供:ELECOM GAMING
結論及び感想
ELECOM VM800Lは前作のVM600シリーズの形状や性能をブラッシュアップさせ、さらにゲーミングギア史上初のUWB通信を搭載した大型ハーフエルゴマウスです。
重量は75gから64gに軽量化され、メインスイッチも光学式に変更、センサーも最新の PAW3950となっています。形状はメインクリックの高さが左右同じかつ右手専用形状になっているハーフエルゴです。同時に発売されたVM800はこのマウスの小型verです。
ただし依然として表面のコーティングは滑りやすい傾向にあり、ここが改善されていないのはかなり勿体ないと言えます。
その他の細かい部分は基本的には全体的に改善傾向にあり、一部を除いて全体的なクオリティがブラッシュアップされたマウスに仕上がっています。
ドライバダウンロード先:https://www.elecom.co.jp/support/download/peripheral/v-custom/eg_tool/
スペック
大型ハーフエルゴ(右手専用)
デザイン
カラーはホワイト/ブラック2色展開。今回頂いたのはホワイトです。ホワイトカラーのメインシェルにブラックのV-Customロゴ、メタリックシルバーのホイールが特徴的なモノクロデザインです。全体的に落ち着いた印象ですが、シルバーカラーのホイールと独特な形状が相まって、落ち着きの中に派手さもあるデザインに仕上がっています。


底面は様々なマウスソールが使用できるようにガイドレス設計となっています。(最近のFinalmouseと同じようなデザイン)
開封時にはドットソールのみが取り付けられており、必要に応じて付属の面ソールを追加し、大型化できます。ゲーマーに優しい設計です。


形状と持ち方
ELECOM VM800Lはとにかく独創的な形状をしたハーフエルゴタイプの右手専用形状のゲーミングマウスです。同じような傾向の形状としてはVAXEE NP-01シリーズや、WIAZOWL OGMシリーズ、Pulsar X3シリーズなどがあげられますが、実際にこれらの間で似ている部分はほとんどありません。
※ここでいうハーフエルゴとはメインクリックの高さが左右で同じである右手専用マウスのことを指します。


全体的なサイズ感としてはLサイズということもあり非常大きく、選択肢としてはRazer Deathadder V4 Proを検討している方が対象となるほどです。筆者の掌は手首から中指の先まで17.5cmですが、正直かなり大きいように感じます。
マウスの高さの頂点はほぼ真ん中にあり、親指側は絶壁かつ滑らかに。小指サイドはかなりのい湾曲率があり、かつ丸みを帯びた逆ハの字になっています。この小指側がかなり癖が強く、このマウスに味を出している部分でもあります。
ターゲットとしている持ち方は「かぶせ持ち」「つかみ持ち」の2種類とのこと。実際に持ってみると「つかみ持ち」が最適であることがわかります。これは主に前述した小指側の逆ハの字が原因で、傾斜がついている小指側は指を添えるよりも、指先でつかみに行った方が圧倒的にグリップ力が高く、スムーズに力を伝えることができます。


シェルの剛性
ELECOM VM800Lのシェル剛性はトップクラスに高いです。
窒素充填型ABS素材から成形されたシェルは強く握ったり、指先で押し込んだりしてもビクともしません。また左右クリックボタンに、衝撃吸収フォームによるテンショニングシステムを搭載しており、ありがちなクリックした後にメインクリックが揺れるということもありません。大変素晴らしいです。
重量
ELECOM VM800Lの公称重量は64.0gです。実際に計測してみたところ、手元にあるホワイトはソール込みで63.6gでした。
公称値よりもわずかに軽量で、その製造精度と検品精度は高く評価できます。
メインクリック
メインクリックのスイッチはRAESHA Opticalにアップデートされています。これはあまり見ないスイッチですが、最近メジャーになりつつある光学式スイッチのうちの一つです。
クリック感は光学式由来のポコポコ感があり、個人的にはあまり好みではありません。しかしながらLogicoolG PRO X SUPERLIGHT2シリーズなどのクリック感で気にならない人は問題なく使用できると思うので、ぶっちゃけあまり深く考えなくて良いです。
サイドボタン
サイドボタンも少し特徴的な位置に設けられています。
マウス中央にありますが、特に手前のボタンがかなりマウス後方に食い込んできています。親指のIP関節あたりで押す人にはかなり最適な位置になっている反面、腹で押す人にとってはアクセスしづらい位置になっています。ここに関しては人によってかなり評価が分かれるポイントになりそうです。


ホイールエンコーダー
ホイールエンコーダーはスクロール・クリック共にかなり硬めです。ただしなぜかVM800よりも音が静かで、少し滑らかに感じます。
ApexLegendsなどでホイールを多用する人にとっては少し扱いづらい可能性がありますが、逆に言えばVALORANTなどで誤爆ジャンプは防止できそうです。
コーティング
正直なところ、コーティングについてはあまり良いとは言えません。特に現行のハイクオリティマウスはグリップ力の高いマットタイプのコーティングがされていることが多く、主にRazerやLAMZUなどはそれを徹底している印象があります。
ELECOM VM800Lは前作同様、特別なマットコートがされている気配もなく、表面のシボ(凹凸)が細かいことも相まってかなり指が滑りやすいです。ABSキーキャップのような手触りです。指先でホールドするタイプのユーザーはグリップテープの使用を検討した方が良いでしょう。
ただしこれはELECOMが意図した通りの仕様です。実際にELECOM Direct Shopでは「心地よく使えるさらっとした手触りの加工」を目指していると説明されています。メーカーによって「コーティングとはどうあるべきか。」が異なるのは面白いポイントかもしれません。
マウスソール
マウスソールは旧作から引き続きスプリットタイプ。特徴的なのはドットソールと面ソールの併用型になっているところです。
実はデフォルトで取り付けられているソールの成形精度が素晴らしく、ほぼ完璧な半ドーム型となっています。突っかかりがなく非常に滑らかです。
付属8Kドングル
付属の8Kドングルは内部にLEDライトを搭載した、キューブ型の全く新しいものです。
また今回目玉のUWB通信にデフォルトで対応し、リアルタイムで可視的な周波数帯に変化することで様々な通信機器との干渉を回避します。ぶっちゃけこれまで「マウスにおける通信の干渉」を明確に体験したことがないので、実用ベースでこのUWBがどのようなメリットをもたらしてくれるのかは不明です。
しかし確実に言えることとして、オフライン会場やその他LANパーティなどの多種対応な通信が交錯する現場では、UWB通信のような「通信の安定化」を目的とした機能があるに越したことはないは確かでしょう。すでに他のメーカーからもELECOMを追う形でUWB通信を実装しようとしているメーカーがいることを考えると、UWB通信は今後メジャー化する機能なのかもしれません。

ソフトウェア
専用のソフトウェア「EGTool」にて各種設定を行うことができます。ただしWEBドライバには非対応なので注意してください。
特徴的なのは「メインボタンのスキャンレートが変更できること」「センサー軸の角度が変更できること」「マウスパッド最適化」の3つの機能です。
ここについては詳しく動画で触れていますので、詳しく知りたい方はYouTubeをご確認ください。
ドライバダウンロード先:https://www.elecom.co.jp/support/download/peripheral/v-custom/eg_tool/
センサーテスト
MouseTesterでセンサーの動作確認を行いました。布製マウスパッドおよびガラスマウスパッドでも問題なく動作します。
実際に使用していても遅延やズレを感じることはありませんでした。(←疾風乙/SP-005→)


クリック遅延
クリックの応答速度はそこそこ高速です。最速値で0.45m/s、平均でも0.8m/sと平均的な8,000Hzマウスの中でも0.4~0.5m/sほど速いです。
ELECOMによるクリックレイテンシー公称値も約0.45m/sなので、その再現性は非常に高く安定したものと言えそうです。これもRAESHA Optical スイッチとUWB通信の恩恵でしょうか。
(ポーリングレート&スキャンレート共に8KHzに設定)


購入方法&まとめ
ELECOM VM800LはAmazonをはじめ、楽天やELECOM Dirct Shopで購入することができます。
かなり大きめのマウスのため人を選ぶマウスであることは確かですが、ここまで大型でかつハーフエルゴのマウスは市場的にほとんどなく、それでいてUWB通信対応とかなりてんこ盛りのマウスではあります。Deathadderの大きさを求めているが、太く感じたり、つかみ持ちがしにくいと感じる人は積極的に選択肢に入れていいと思います。もし大きさが心配な人は、もう一回り小さいVM800がかなりおススメなのでぜひチェックしてみてください。
ただしやはり唯一の欠点であるコーティングがかなり足を引っ張っている印象が強いです。理念があるとはいえ、UWB通信を必要としているようなギーク層が求めているのは、本当にサラサラとしたテクスチャーなのでしょうか….? 筆者視点では形状や機能が相当いいだけに、このグリップ力の低さがかなり目立ってしまっています。
とはいえコーティングの問題と特徴的な大型形状を使いこなすことができる人にとっては、最高のハーフエルゴマウスとなることは確かです。












