スペック/SPECIFICATION
ZENAIM KEYBOARD(ゼンエイム キーボード)は日本の自動車部品メーカー“東海理化”から新しく発足したゲーミングブランド“ZENAIM”が手掛ける磁気ホールスイッチゲーミングキーボードです。
ZENAIM KEYBOARDは国内初の自社開発型磁気スイッチを搭載し、世界初のロープロファイル型磁気スイッチキーボードとして登場しました。そのバックグラウンドにはプロゲーミングチーム【ZETA DIVISION】との共同開発があり、日本の「モノづくり」とゲーミングギアの「最新技術」が融合した新製品としてかなりの注目を集めました。
出だしこそ苦戦したものの昨年11月にはWooting 60HEと同じRapidTrigger(MOTIONHACK機能)にも対応したので、今回はその機能と10か月間使用した感想を踏まえてレビューしていきます。
ロープロファイルテンキーレスサイズ/LP TKL (JIS)
D139.2×W380.8×H24.5 mm
デザイン/DESIGN
ZENAIM KEYBOARDのデザインは他のゲーミングギアとは少し趣向が異なるデザインをしています。ケースは少し黄色みがかったシルバーカラーのアルミ合金トップフレームに、真っ黒なプラスチックボトムケースを採用。キーキャップには適度なマット加工が施されたZENAIMオリジナルのものが採用されています。
ZENAIMのホームページからもわかることですが、デザイン全体的に言えることはまず間違いなくこれまでの「ゲーミング」から差別化したものになっているということです。カラーリング・質感・RGBライティングにおいて柔らかく洗礼されたデザインになっており、好みは分かれると思いますがかなりモダンチックな感じに仕上がっています。個人的にははちゃめちゃ好みであり、後々触れますがソフトウェアデザインとの調和もとれていて本当に美しいです。
しかしデスクセットアップをするには少々難しく、今までブラック・ホワイトカラーが主流であったゲーミングギアにおいてこのカラーリングはやはり好みが分かれると思います。また互換性の違いから現状自分の好みのキーキャップに変更することもできません。
※2023/11以前・以降では生産ロットによってキーボードの色味が若干異なります。旧:ゴールド寄り 新:シルバー寄り
またZENAIMは旧ロットにおける不具合品についてリコールの声明を発表しています、もし交換していないという方がおられましたらサポート窓口からお問い合わせしてみてください。なお現行ロットに関しましてはこれらの問題は解決しているとお話を聞いています。
スイッチ/SWITCH
ZENAIM KEYBOARDに搭載されているスイッチ=ZENAIM KEY SWITCHはZENAIMがこの製品において最もこだわりをもつ技術の一つです。
そもそも東海理化は自動車部品におけるセンサー部品などを手掛けるメーカーであり、他のゲーミングギアメーカーとはそのバックボーンが大きく異なります。小さな欠陥が大きな事故へ繋がりかねないシビアな業界。そこで培われた技術を応用したZENAIM KEY SWITCHとそれを読み取るセンサー基盤には大きな自信と信頼を持っていることでしょう。
(あえて触れますが、だからこそ旧ロットにおけるスタビライザー・キーキャップの欠陥は社内外で大きな問題となったはずです。)
こだわりを感じられるのは主にキーストローク・押下圧・打鍵感・磁気センシングとスイッチというパーツを見ただけでもかなり多いです。今までのゲーミングキーボードのキーストロークは通常4.0mm、短くても3.0mmでしたが、ZENAIMは度重なる研究・検証のうえ1.9mmという超ショートストロークを採用しています。これによって自分の操作とキャラクター動作間のラグが極限まで小さくなり、それに国産自動車にも採用される高精度磁気センシング機能を融合させることで「ハードウェア」「ソフトウェア」両方の観点からプレイヤーの才能を最大限引き出す努力が施されています。
打鍵感/Key Impression
個人的な感想になってしまいますが打鍵感は非常に好みです。1.9mmという超ショートストロークを体験するのは初めてですが、そもそも自分はLogicool G913を使用していたことがあり、LP(ロープロファイル)キーボードには慣れていました。そのおかげもあってか通常の高さのキーボードよりもZENAIMのほうが打鍵しやすく、スイッチの構造上、軸ブレが極端に少ないのでそこら辺のストレスも一切ありません。スプリングやステムに対してのルブも十分だと思います。
打鍵音は消して静かではありません。これは仕方ないと思いつつ、やはり今のトレンドを見るともう少し静穏性を上げたほうがウケは良いだろうと思いました。打鍵音にはケース構造やスイッチ、キーキャップの形状など本当に様々な要素が絡んでくるので、極端に静穏性にこだわるのであれば他の磁気スイッチキーボードを検討するのもいいと思います。
音は最近流行りのコトコトした感じとは異なり、正直形容しにくいです。決して悪くはないですが誰もが心地よいという音かと聞かれればそれとは異なると思います。
ソフトウェア/SOFTWARE
ソフトウェアデザインは非常に素晴らしいと言わざるを得ません。テーマカラーやレイアウト、設定項目、クリックした際のトランジションやレスポンスの速さなどは他のメーカーのソフトウェアと比較するまでもないほど洗礼されています。勿論機能面も充実していて、AP/RTの変更やRGBライティングの変更、キーレイアウトの変更などを行うことができます。
BEYONDモードの説明がなかったり、録画機能が若干不安定だったりと気になる点は少々ありますが、基本的にはアップデートでどうにでもなる部分なのでそこまで問題視はしていません。
ZENAIM SOFTWAREの強みはMOTIONHACK(Rapid Trigger)を業界最速クラスである0.05mmに設定できることに加え、ゲームごとにプロファイルを設けられること、更にはソフトウェアサーバーにアップロードされたプロプレイヤーの設定をオンラインで読み込んで使用できることだと思います。
My Setting
筆者は指定キーの設定は無く、全てのキーで同じ設定を使用しています。
- 有効範囲:0.05mm-1.8mm
- ONストローク(AP):0.5mm
- OFFストローク(RT):0.05mm
- MOTIONHACK ON
- BEYOND MODE OFF
APを0.5mmにしている理由はVALORANTにおいて撃ち合うときにADキーをすぐに押してしまう癖があるからです。弾を撃ってから移動できるようにわざとワンテンポ遅くなるように設定しています。OFFは最速設定にしています。
BEYOND MODEは設定した有効範囲外でもキーを完全に離し切るまでは、MOTION HACK機能が継続される機能です。他社でいう「連続ラピッドトリガーモード」と殆ど同じであり、予期しないタイミングでもMOTIONHACKを使用することができます。基本的にはONのほうがいいと思います。
ZENAIMについて思うこと
私は6月にZENAIM様にお声がけいただき、その後Ver.2のテストロットやMOTIONHACKの先行テストなどを挟みZENAIMをひそかに応援させていただいていました。これはメーカーに頼まれたからではなく、シンプルにZENAIMというブランドとそのプロダクトデザインに惹かれたからです。
正直私の目線から見ればZENAIM KEYBOARDの初期ロットは本当にひどいものでした。他のメーカーではありえないようなスタビライザーの欠陥やキーキャップの欠陥、それに48,180円(税込)という価格とZETA DIVISION監修という売りが追い打ちをかけ、誰もが「ZENAIMは終わった。」と考えたでしょう。しかし本来であればありえない全品リコール対応や本来搭載する予定のなかったMOTIONHACK機能の追加、磁気スイッチが気温変化に弱いことをいち早く察知しての自動キャリブレーション機能の追加など、国産メーカーだからこそできるようなその努力は、少なくとも私の関心を取り戻すには十分なものでした。
そしていよいよ追加されたMOTIONHACKは問題なく動作し、磁気センシングの正確さと安定した打鍵感、バグのないZENAIM SOFTWAREのおかげもあり今となっては既存の磁気スイッチキーボードを凌駕する域に達しています。結局のところプロシーンで使用されるからにはパフォーマンスもそうですが、それ以上にいかにハード・ソフトにおける問題が発生せずに使用できるかも重要です。この両面においてZENAIM KEYBOARDはかなり理論値に近い製品に仕上がっていると思います。
まとめ/Summary
- 磁気としては唯一のロープロファイルキーボード
- 最短0.05mmのRapid Trigger機能搭載
- こだわりまくった1.9mm超ショートストロークスイッチ
- 美しく洗礼されたデザイン
- 使いやすく多機能なソフトウェア
- 配列とサイズに選択肢がない
- USB差込口が右側なので邪魔になりやすい
- キーボードとしては価格が圧倒的に高い
結論として”ZENAIM KEYBOARD”は「高いコストを払ってでも高パフォーマンスで安定した、革新的キーボードが欲しい。」という人に最適なゲーミングキーボードだと言えると思います。
あえて強く言うのであればこれはZETA DIVISIONが好きな人がただ購入するようなファンアイテムではありません。勿論売れるに越したことは無いのでZETAファンの人も気に入ったらぜひ触れてみてほしいギアであります。しかしその開発とここまで来た背景にはZENAIM及びZETA DIVISIONの方々が努力とフィードバックを重ね続けた事実があります。いかにプレイヤーの力を最大限まで引き出し、かつ安定したパフォーマンスでサポートできるか。その答えが今のZENAIM KEYBOARDにあるのではないかと思います。
価格は税込48,180円とキーボードにしてはあり得ないほど高価です。それに加えUSB差込口も右側であり、サイズ展開も現状TKLサイズしかありません。正直これだけの資金があればそれなりに良い磁気スイッチキーボードとワイヤレスマウス、マウスパッドを購入することができます。当然キーボード以外が揃っていない、もしくはお財布に余裕がない状態でそれらを吹っ飛ばしてまでZENAIM KEYBOARDを買う価値があるかと問われれば私は否定するでしょう。このキーボードをレビューするにあたって改めてゲーミングギアにおける価格の重要性を再認識することができました。
個人的に今後のZENAIMに期待することはUS配列のリリースと60%や65%などのミニマサイズの展開。それに伴って吸音素材による静穏性の向上とUSB差込口の位置変更です。ここら辺はおそらく皆さんも気になっていた部分だと思うので、様々な方のフィードバックを聞きながら新製品の開発を進めていただければと思います。
PR:ZENAIM様よりサンプルを提供して頂いています。(トップにも記載)